美術館大学構想シンポジウムvol.2

神秘の樹と明日の鳥たち|詩・旅・思索

「驚異のことばの採集者」 酒井忠康

傳説は古い國土の自然に生い茂つた椿や松や杉の様である。
其處に成長し繁茂してゐる植物も、
皆夫々枝振りが異なつてゐるから面白い。
傳説研究は世態人情の微妙を窺はしめると同時に掬めどもつきない情趣がある。
人はよく傳説と昔話とを混同する。
然し學問はこの二つを區別する。
傳説が植物なら昔話は小鳥に似て居る。
何處へでも「昔々ある所に─」と云ふ同じ姿で飛び歩いてゐる。
(柳田國男『傳説とその蒐集』より抜粋)

東北芸術工科大学美術館大学構想室が企画する第2回目のシンポジウムに「驚異のことばの採集者」2人をお招きする。詩人・吉増剛造氏と民俗学者・赤坂憲雄氏である。
2人には柳田國男の『傳説とその蒐集』の一文(上記)を読み解くところから口火を切って、多義的な意味を持つ混沌とした伝説の地の空間にあそんでいただくことにした。ことばの奥行きを失った現代文明の中に私たちは生きている。だから生の力に充ちたことばによって再生をはかるしかない。「驚異ことばの採集者」2人は、おそらく魔性の空間といってもいい、一種、境界的な場に私たちを誘ってくれるのにちがいない。
[美術評論家/世田谷美術館館長/美術館大学構想委員長]

柳田民俗学について語る吉増剛造氏/こども芸術教育研究センターこども劇場/2006年10月28日[土]

パンフレットデザイン:鈴木敏志(JEYONE)

上:柳田民俗学について語る吉増剛造氏/こども芸術教育研究センターこども劇場/2006年10月28日[土]
下:パンフレットデザイン:鈴木敏志(JEYONE)

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