村山市役所(村山市教育委員会)の生涯学習課で市民とふれあいを大切にしながら、芸術や歴史文化に関わる機会の創出に尽力している吉田峻太朗(よしだ?しゅんたろう)さん。歴史遺産学科で学んだフィールドワークや文献史学以外にも、学生時代に打ち込んだ演劇サークルでの経験や、友人たちとのつながりが「多くの人と関わり仕事をする喜び」につながっています。今回は、吉田さんが施設管理をされている村山市の「最上徳内記念館」にてお話を伺いました。
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芸術と歴史文化を生かし、まちを活性化する
――はじめに現在のお仕事内容を教えてください
吉田:村山市役所の生涯学習課文化係で、村山市の芸術文化の振興と、文化財、歴史文化の保護のために必要な手続きなどを担当しています。また、市内にある3つの文化施設、最上徳内記念館、最上川美術館、村山市民会館の運営、予算管理もしています。記念館と美術館には学芸員などの専門職員がいるので企画展示などはお任せしていますが、私が芸工大の卒業生ということで、企画立案や美術品の取扱いなどの動きを求められることも多いですね。その度に「仕事でできるほど扱ってきてないんです」と、伝えているんですが、それでも展示の知識と経験は少しあるので、お手伝いさせていただいています。
――村山市の芸術振興、歴史文化を守るための課題や取り組みはありますか?
吉田:人口減少や社会様式の変化から、歴史文化を守ることが難しくなっている現状があります。私が文化係に配属された平成30年には「村山市歴史文化基本構想」という計画が進んでいて、村山市の歴史に関する講演会やイベントが計画されていました。その中で私は、村山市の歴史を市民の皆さんと一緒に発掘しようという「れきぶんフェス」というイベントを担当しました。
地域で活動している歴史団体の方々が一堂に介してパネル展示をしたり、歴史文化の事例発表をしたりして、情報交換をしていただくという内容です。村山市の西側にある葉山に伝わる信仰に関するシンポジウムも開催し、市民が新たな発見を共有する機会になりました。結構な数のイベントを行ったので、参加者の方々からの反応も良かったです。「こういうイベントがあまりなかったから、参加できて楽しかった」と言われたときはありがたかったですね。これをきっかけに、フェス終了後も歴史文化系のイベントを開催することができました。
これらのイベントをきっかけに、村山市の市報に地域の歴史を8回に分けて連載してほしいという依頼もありました。原稿を書くために市史や県史を読んだり、行ったことのない場所に行って写真を撮ったりして頑張りましたね。調べるだけでなく現地にも行ってみるというのは、歴史遺産学科で学んだ「基本的なフィールドワークを大事にしなければならない」という教えが根底にあったからかもしれません。
――市役所の仕事というと定型のイメージがあったのですが、1人の職員の知識や熱量で仕事は広がっていくものなんですね。
吉田:部署によってはそういう場合もありますね。入庁直後に配属された税務課では税金の計算をしていたので、そこではしっかりルーティンワークでしたよ(笑)。私は一般行政職員の採用なので、異動もあります。今でこそ大学で学んだことに関係した仕事がやれていますが、来年度は保健課で健康保険の仕事をしているかもしれないし、農林課で農業関係の仕事をしているかもしれません。
私はそもそも「必ずこれをやりたい」という確固たるものがあったわけではないんです。地方公務員になろうと思った理由は、漠然と地元で多くの人に関わる仕事をしたい、いろいろな部署で働いてみたい、というものなんですよ。
――仕事で、一番やりがいやモチベーションを感じるのはどのようなことですか?
吉田:私は、人と話すことが好きなんだと思います。美術館の展示関係では出品者である地域の作家さんと話をしたり、仕事でお付き合いがある方、事務局をしている芸術団体の会員の皆さんともよく話します。税務課のときは税金の相談に来られる方とも色々な話などをしてましたね。話をしている方が居心地がいいので、いくらでも話せます。
――吉田さんが居心地の良さをつくり出しているのかもしれませんね。
吉田:周りの人にそう思っていただけたらいいですね。市町村職員は、地方公務員の中で一番住民の近くにいる職員なので、「相談してみようかな」と思っていただけたらありがたいです。
――これからどのような仕事をしていきたいですか?
吉田:芸術と歴史について、興味を持ってもらえるような機会をできる限りつくっていきたいです。大人になって芸術や歴史に触れ続けている人はごく一部であるという状況を変えていきたいので。そのために間口を広げるようなイベントを開催したり、興味がない人でも来たくなるような展示を進めていきます。市民会館を利用して、芸術文化活動ができるような体制づくりもしたいですね。
これまで行ってきた美術館や記念館の事業では、芸工大の先生方や学生さんにも度々ご協力いただいています。美術科の木原正徳先生?青山ひろゆき先生から指導してもらえる子ども絵画教室などは人気もあり、今後も継続していきたいですね。上山市の楢下宿では、歴史遺産学科だけでなく、建築?環境デザイン学科や美術科、文芸学科も入ってコラボレーションをしていますよね。村山市でも芸工大の人たちと一緒にできたらすごく楽しいだろうと思います。
――芸術活動や地域の歴史文化を知ることは、まちにどんな変化をもたらすと思いますか?
吉田:芸術や歴史に限った話ではないのですが、自分が「興味が持てること」というのは、他の人とつながるコネクターになり得るものだと思っています。もし市民の皆さんに、芸術や歴史を通じて、自分がこれまで持っていないパーツを提供できれば、そこから新しいコミュニティができ、今あるコミュニティが活性化することもあると思います。そして最終的に、まち全体の活力が生まれてくるのではないでしょうか。
「地方創生」とか「地域を元気に」、という話はよくされていますが、人と人とのつながりが希薄している現代で、芸術や歴史が人をつないでいくきっかけの一つになればいいなと思っています。
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――歴史遺産について学ぼうと思ったきっかけは?
吉田:実は自分は大学の雰囲気もよくわからないまま進学を決めてしまったんですが、最高に楽しい4年間を過ごすことができました。歴史遺産学科で出会った友人たちと、よくボウリングやカラオケをしていましたね。その仲間とは卒業して8年が経った今でも、SNS やラインを通して交流しています。
思い出すのは、古代の弓を再現しようという考古学の授業での課題。グループで当時の材料と手法を調べ、イヌガヤという針葉樹が素材であることがわかりました。芸工大の北側にある岩波八幡様のところにイヌガヤが生えているというので、ノコギリを持って向い2本の木を採取したところまでは良かったのですが、制作の終盤で結局折れてしまったんです。文献をきちんと読み込んで手順を踏むべきだったのに、途中から独学でやってしまったのが原因でした。もちろん反省はしたのですが、なんだか笑えてしまって(笑)。今となってはいい思い出です。
ほかには、サークルの「劇団No Name」に所属したことで、他学部、他学科の学生とつながりを持ち、いろいろな価値観や考え方、生き方を知ったことが、誰とでも楽しく話せる、私の対人許容範囲を広げてくれたのではないかと思います。1年間のうち、春と冬、芸工祭、そのほかに企画公演もあり、大道具、小道具、役者を兼ねていたので忙しくしていましたね。演劇は今も続けていて、地元村山市の「劇団赤ひげ」に所属しています。
――とても活動的に過ごされていたんですね。
吉田:歴史遺産学科の授業も、外に出る機会が多かったです。最初は、高校の授業の延長のように、文献や先行研究を読み漁ることをイメージしていたのですが、歴史遺産はフィールドに直接出て見るのが基本でした。私は、1年次に田口洋美先生のフィールドである新潟県村上市の三面(みおもて)地域を訪問したり、天童市の古い蔵で古文書の整理をしたり、ゼミ旅行で滋賀県の彦根市に行ったりしましたね。私は参加していませんが、民俗学だと小国町でウサギ狩りや熊祭り、考古学だと高畠町で発掘調査、歴史学だと岩手県一関市の本寺地区をフィールドに調査をやったりしていました。
公務員としてこの仕事をしていると、学生時代にもっといろいろなフィールドに出ておけばよかったな、ともったいなく思います。そのときの選択で今の自分があるわけですが、望めば得られる学びの機会をもっと生かしたかったと、社会人になって思いますね。
――では最後にこれから受験を考えている方にメッセージをお願いします。
吉田:芸工大は、いろいろなところに学びの入り口が開いています。「入っていいのかな?」「自分の時間がなくなってしまうんじゃないかな」と考えてしまうのはよくわかります。でも、入れるところは全部入っていいんじゃないかなと思います。学生のときにしかできないことがあり、必ずいつかどこかでその経験は何かにつながってくるから、安心して飛び込んでみてください。
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楽しく充実した足球比分|直播_皇冠体育-篮球欧洲杯投注官网推荐を送り、課外活動にも精を出していた吉田さん。もともとは話すのが得意ではなかったそうですが、気のおけない友人たちとの出会いや演劇を通して、話すことが好きになったそうです。卒業論文発表では、演劇サークルの経験が生きたのか、特例のパフォーマンス賞を受賞。職場では、市民とのふれあいにやりがいを感じながら、意欲的に仕事に取り組み力を発揮しています。芸術や歴史文化と市民の架け橋となっている、吉田さんの活躍に期待しています。
(撮影:渡辺然、取材:上林晃子、入試広報課?土屋) 歴史遺産学科の詳細へ足球比分|直播_皇冠体育-篮球欧洲杯投注官网推荐 広報担当
TEL:023-627-2246(内線 2246)
E-mail:public@aga.tuad.ac.jp
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