
建築家の飯塚 豊(いいづか?ゆたか)さんの主宰する、株式会社アイプラスアイ設計事務所にて、木造戸建て住宅の設計監理を行っている菅原茉利(すがわら?まり)さん。入社1年目で二級建築士に合格し、その知識と感性を活かしてこれまでに6軒の個人宅を手がけています。今回は、“人の住まいを作る”お仕事をされている菅原さんに、建築士の魅力や、芸工大の建築?環境デザイン学科だからこそ得られた学びについて伺いました。
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家づくりの肝を握るのは“コミュニケーション”
――アイプラスアイ設計事務所さんでの、建築士のお仕事内容について教えてください
菅原:私は普段、木造戸建て住宅の設計や、工事監理を行っています。住宅の設計計画から完成まで、一連の流れをすべて担当する仕事です。飯塚代表から指示やアドバイスをいただきながら、お施主さん(=施工の依頼者)と一対一でやり取りを進めていますね。
弊社のような設計事務所では、ハウスメーカーや工務店よりも幅広い要望に応えて住宅を建てることができます。デザインはもちろん、使い勝手や強度などの面でもさまざまな提案が可能です。その強みを活かしてお施主さんにとって最高のマイホームを建てるために、打ち合わせを重ねながら「ご要望を設計にどう落とし込むか?」を日々考えています。

――建築士として働いていて、どんなときにやりがいを感じますか?
菅原:やはり、大きなやりがいと達成感を得られるのは、お施主さんに住宅を引き渡す瞬間です。念願のマイホームがついに手に入るわけですから、みなさんとても喜んでくださっています。
入社して4年間で既に6軒、お引き渡しまで担当させていただきましたが、何度体験してもこの瞬間は一番「頑張ってきてよかった!」という気持ちになります。
――お施主さんに感動を与える建築士として働くうえで、菅原さんが大切にされていることを教えてください
菅原:“お施主さん目線”を想像したうえで、こちらの意図がきちんと伝わるようにコミュニケーションをとることです。
たとえば、家を建ててくださる職人さんや、現場監督とやり取りする際に使うような専門用語を、お施主さんとお話をする際に使っては、意味が伝わらないですよね。そういった言葉をうまく翻訳してお施主さんに伝えることは、第一に意識しています。
また、イレギュラーな事態への対応の判断や、その際のお施主さんへの伝え方も非常に重要です。設計の段階で「これでいこう!」と決まっても、現場で作業が始まるとどうしても変更せざるを得ない部分は出てきてしまいます。私たちは設計事務所という立場ではありますが、現場においてはお施主さんの代理で施工の様子を見ている、という側面もあるんですね。そのため、イレギュラーな事態が発生したら「お施主さんは家づくりにおいて何を大事にしているのか?」をよく考えたうえで、「お施主さんならどうするか」を踏まえて判断します。
ものによっては、こちらの一存で変更を決めることが難しく、お施主さんに「ここを変えてもいいですか」と確認をとるケースもあります。そういった状況になると、お施主さんに承認をいただかなければ作業を進めることができません。そのため、ご納得いただける説明ができるよう心がけています。

――建築士のお仕事では、建築の知識だけでなくコミュニケーションも非常に重要になってくるんですね
菅原:そうなんです。意外かもしれませんが、お施主さんとも職人さんや現場監督とも、ひたすらお話をする仕事なんです(笑) お施主さんとのやり取りについては、着工(工事の開始)後の相談だけでなく、それ以前の打ち合わせ段階から発生しています。たとえば住宅のデザインや間取りを決める際、お施主さんとのご要望とは別で、私たちの目線で「こうしたほうがいい」と思うことがあります。その際、やり取りをスムーズに進めるには、伝え方の工夫はもちろん、関係性の構築も重要です。お施主さんからの信頼があれば、こちらの意図がより伝わりますし、そのためにはしっかりとコミュニケーションをとっておく必要があります。
コミュニケーションをきちんととって信頼関係を構築しておくことが、良い住宅を作るために欠かせない、ということですね。
――就活の際、数ある建築事務所からアイプラスアイ設計事務所さんを選ばれたのは、どのような理由だったのでしょうか
菅原:ひと言でいうと、飯塚代表の人柄です(笑) 大学2年生のときにオープンデスク(インターン)でお世話になったのですが、その際に指導をいただいて、設計への考え方にとても共感しまして。「ここで働いて、役に立ちたい!」と思ったのが大きな理由ですね。また全体の雰囲気も良く、働きやすそうな職場だと感じました。
入社してからもその印象は変わらず、飯塚代表や信頼できる先輩たちとやり取りをしながら、日々勉強させていただいています。

――入社後のできごとで、印象に残っているエピソードはありますか?
菅原:都内でとある戸建て住宅を担当させていただいた際、完成後の内覧会に、なんと恩師の竹内昌義(たけうち?まさよし)先生※がいらっしゃったんです。そもそも弊社の飯塚代表と竹内先生はお知り合いで、内覧日当日に突然「行きます」と代表宛てに連絡が来て(笑) 自分が社会人になってから頑張ったことを、大学時代にお世話になった竹内先生に見ていただけて嬉しかったです。そして何より、びっくりしました。
特に建築?環境デザイン学科の場合、在学中に作るのは図面や模型だけなので、実際の住宅まで先生に見ていただく機会はないんですよね。そういった意味でも、内覧会に先生がいらっしゃって、私が手がけた住宅を見てくださったのはとても貴重なことだと思います。
※建築?環境デザイン学科教授。建築家。詳しいプロフィールはこちら。
芸術×建築という、芸工大ならではの環境で過ごした4年間
――芸工大の建築?環境デザイン学科を選んだ理由を教えてください
菅原:建築を学べる大学としてこれ以上なく魅力的で、当時の私の理想にピッタリな環境だったからです。
芸工大については、私自身が山形県立新庄南高等学校の美術部に所属していて、芸工大の先生方から絵のレクチャーを受ける機会があったので、それで知っていました。「山形に、芸術を学べる大学があるんだ!」と思いましたし、学費もほかの芸術大学と比べてリーズナブルなのもあり、「ここしかない!」という気持ちでしたね。
そのうえで、なぜ建築?環境デザイン学科を選んだのかというと、小さい頃から建築に興味があったからです。小学生のとき、ノートに理想の間取りを描いていたこともあって(笑) 建築を学べる大学自体は東北にいくつもありますが、私としては絵を描くのが好きだったのもあり、“芸術大学で建築を学ぶ”ということに価値を感じていました。
また、芸工大の建築?環境デザイン学科はユニークなプロジェクトが多いのも魅力的ですよね。たとえば、大学の裏にある『悠創の丘』の木を伐採して、林道を作るプロジェクトだとか……。そういった体験は、ほかの大学だとなかなかできないんじゃないか? と思ったのもあり、芸工大の建築?環境デザイン学科を第一志望に選びました。

――建築?環境デザイン学科では、どんな授業が印象に残っていますか?
菅原:1年生の最初にあった、デッサンの授業です。建築のほか、人物や有機的なモチーフも描いたのですが、デッサンを通じて“ものを観察して、理解する力”が身についたと思います。その力は仕事でも活きていますね。たとえば住宅のデザインを考えるにあたり、色の組み合わせや素材を決めるときに、当時培った観察力が役に立っています。そういった基礎となる考え方を、入学して最初の段階で学ぶことができたのは大きかったですし、これこそが芸術大学で建築を学ぶ醍醐味ですよね。
ほかには、5人一組のグループで小学校のリノベーションを考える、という演習も印象に残っています。基本的に、建築?環境デザイン学科では1人で向き合う授業や課題がほとんどなのですが、その演習だけはグループワークだったんです。普段は自分のやり方、自分のペースで進められますが、グループワークとなると人それぞれ得意分野や考え方も違うので、5人分の考えをまとめていく必要がありました。グループならではの難しさはもちろんありましたが、新鮮でしたし、すごく楽しくて、今でもよく覚えています。先ほどもお話ししたように、建築士の仕事ではコミュニケーションがとても大事になってくるので、演習でグループワークを経験しておいてよかったと思います。

――建築士として、今後の展望はいかがでしょうか
菅原:入社してから4年間、飯塚代表や先輩方に助けていただいてここまで来ましたが、これからは自分でなんでもできるようになるのが目標です。とはいえ独立、という考えはまだなくて、ここに所属しながら一人前を目指していきたいです。アイプラスアイ設計事務所の大事にしている“構造?性能?デザインのバランスの良い設計”を極めつつ、これからもお施主さんに喜んでもらえる住宅を設計したいと思っています。
――最後に、受験生へのメッセージをお願いします
菅原:私自身が芸工大に入学した理由と重なるのですが、やはり芸術を教えている大学で建築を学ぶ、ということにすごく意味があるはずです。建築に興味があってその点に魅力を感じる方には、ぜひとも芸工大の建築?環境デザイン学科を選んでいただきたいです。
ただ、そのうえでも選択肢は多く持っておいたほうがよいので、志望校を決めるにあたってはほかの大学の情報も集めることをおすすめします。その情報収集の一環として、オープンキャンパスには参加していただきたいですね。大学の公式サイトやパンフレットにもたくさんの情報が載っていますが、実際に足を運んで、その大学の雰囲気を肌で感じることで得られる情報量というのは段違いです。私自身も、オープンキャンパスで教授とお話をさせていただいて参考になったことがたくさんありました。
高校と異なり、大学受験は将来の職業にもかかわるので、志望校選びが難しい部分もありますが、できる限り情報を収集して、納得のいく大学を選ぶことが大切だと思います。

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実は建築業界は狭く、業界関係者向けのセミナーで竹内昌義先生の姿を見ることもあるそうです。菅原さんはそんな竹内先生について「学生時代と今では、距離感がまた少し違う。“雲の上の人だったんだ……”と感じました」といいます。周囲へのリスペクトの心をもって、ポジティブに日々の業務に励んでいる菅原さん。今後も素敵な住宅を手がけ、多くの人の生活を作っていくのでしょう。
(撮影:永峰拓也、取材:城下透子、入試課?須貝)

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