“柔軟なデザイナー”を目指し、理想の製品を追い求める日々/株式会社マーナ?卒業生 菅野彩瑛

インタビュー

芸工大のプロダクトデザイン学科を卒業した菅野彩瑛(かんの?さえ)さんは、創業150年以上の歴史をもつ生活雑貨メーカー?株式会社マーナにて、プロダクトデザイナーとして活躍しています。2024年12月には、ご自身が手掛けた『ゴミ袋を入れやすいポリ袋ホルダー』が発売されました。今回はマーナ本社にお伺いし、開発?デザインの裏側や、今のお仕事でも活きている大学での学びを菅野さんにお話しいただきました。

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構想から2年半、ついに念願の製品発売へ

――株式会社マーナさんのプロダクトデザイナーとして、普段はどのようなお仕事をされているのでしょうか?

菅野:いわば、製品が生まれるまでの“すべての工程”に関わるポジションとして、デザインを中心に日々さまざまな業務を行っています。

たとえばアンケートを実施して、ターゲットになる人たちは普段、日常生活のどんなところで「こうなると、もっといいな」を感じているのか? を調査します。ほかには競合他社で売れているものや、そこに寄せられている口コミの内容も調べますね。そこから、ユーザーの感じている不満を解消するには、どんな製品にどんな機能を落とし込めばいいんだろう? というのを考えていきます。

……ここまでは、一般的にイメージされる“プロダクトデザイナー”の仕事かな、と思うのですが、実はこれだけではありません。製品のキャッチコピーの調整や、公式サイトに載せるための写真撮影に携わるのも、マーナのプロダクトデザイナーの仕事です。

株式会社マーナ プロダクトデザイナー 菅野彩瑛さん
お話をお聞きした菅野彩瑛さん。

――そこまで、プロダクトデザイナーが担当されるんですね

菅野:キャッチコピーに関しては、厳密にはコミュニケーション専門部署のメンバーが考えてくれます。そのうえで、「この製品はこういった意図でデザインしたから、こうするとユーザーに魅力がもっと伝わる」と思う部分があればフィードバックします。プロダクトデザイナーの意図が消費者に伝わるよう、キャッチコピーをブラッシュアップしていくようなイメージです。

――2024年12月に発売された『ゴミ袋を入れやすいポリ袋ホルダー』 について教えてください

菅野:こちらは、私がデザインを担当させていただいた、初めての製品です。
調理台での使用を想定していまして、ポリ袋をサッとかけて卓上ゴミ箱として使うことができます。使わないときはコンパクトに閉じられるので、必要なときだけ、最低限のスペースで使えるんです。
台形のフレームが2つくっついていて、それが観音開きになるというデザインになっているのですが、この台形がポイントで。使用時に手前にくる長辺を斜めにすることで、袋口の手前が大きく開いてゴミが捨てやすい、という特長があります。

菅野さんがデザインを手掛けたポリ袋ホルダー。さまざまな用途で使うことができそう。

用途としては三角コーナーとほとんど一緒ですが、先ほどもお伝えしたように、こちらは使わないときにはコンパクトにしまっておくことができます。「三角コーナーをずっと置いておくのは抵抗があるけど、キッチンでちょっとしたゴミを捨てる場所は欲しいな」と思っている方にぜひ使っていただきたいな、という想いで製作しました。入社してからずっと向き合ってきた製品なので、やっと発売できてとても嬉しいです!

――具体的には、どれぐらいの期間がかかったのでしょうか?

菅野:約2年半ですね。本格的に着手したのが、入社1年目の6月だったので。あっという間です……。
何回も試作品を作って、使用感を社内で1か月間モニタリングするなど、発売までに一つひとつの工程を念入りに進めました。

株式会社マーナ プロダクトデザイナー 菅野彩瑛さん

――大学を卒業して初めての、お仕事としてのプロダクトデザインは、経験されてみていかがでしたか?

菅野:「たくさんの人の知識や意見が合わさることで、より良い製品が生まれる」というのを実感しました。

元々、この製品はステンレスで作りたかったんですよ。でも、いろいろな事情でステンレスでの製作が難しいね、ということがわかって……。結果、ABS樹脂という素材を使うことになったのですが、それによって本体と滑り止めを一体化できるようになったんです。

株式会社マーナ プロダクトデザイナー 菅野彩瑛さん 社内に設けられたモックアップの制作ブースで、先輩エンジニアに相談中。
社内に設けられたモックアップの制作ブースで、先輩エンジニアに相談中。

そして当初は“コ”の字の形だったのが、紆余曲折を経て現在の台形に落ち着きました。プロダクトデザイナーの先輩方や、設計を担当する部署の方たちの協力がなければ、この完成形に辿り着くことはできませんでした。最初こそ「ステンレスで作りたかったな……」という気持ちでしたが、今はABS樹脂でよかった! とすら思います。

――プロダクトデザイナーとして働くうえで、どんなときにやりがいを感じますか?

株式会社マーナ プロダクトデザイナー 菅野彩瑛さん 菅野さんが担当した『おさかなスポンジ』の限定パッケージ。
菅野さんが担当した『おさかなスポンジ』の企画品。

これは「そのままプレゼントとして渡せるスポンジ」として企画しており、そのように使っていただいた方からの口コミがECサイトに寄せられたんです。「元々お気に入りのアイテムだったので、プレゼントとして渡せてうれしい!」「かわいい色なので、洗い物が楽しくなった」などなど……。
お客さまからコメントをいただけると、「これでよかったんだ!」と自信につながりますし、やりがいを感じます! ポリ袋ホルダーにも今後どんなお声が届くのか、今から楽しみです。

“苦手”を乗り越え、現場でも通用するスキルを身に付けられた

――プロダクトデザインには、受験生のときから興味があったのでしょうか

菅野:正直に言うと、当初はプロダクトデザインのことはまったく考えていなかったんです。「芸工大を受験しよう」が先でした。
元々、絵を描くのが好きで「将来はクリエイティブな仕事をしたい」と、ざっくり考えていました。でも、私は美術部には入っていなくて、デッサンが描けるわけでもなかったので、どうやったら美大に入れるんだろう? と思っていて。高校の美術の先生に相談したら、芸工大のことを教えていただきました。

それで、芸工大のことをもっと知ろうとしてパンフレットを取り寄せました。「将来の仕事につながるなら、デザイン系かな?」と思って、デザイン工学部の学科紹介を見て、そこでプロダクトデザイン学科のことを知ったんです。当時は三菱鉛筆さんの『クルトガ』など、お気に入りの文房具がたくさんあって、「文房具って、プロダクトなんだな」と思いました。そこからプロダクトへの興味が出てきて、プロダクトデザイン学科を受験することに決めました。

株式会社マーナ プロダクトデザイナー 菅野彩瑛さん

――プロダクトデザイン学科で、印象に残っている授業について教えてください

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――芸工大のプロダクトデザイン学科で学んだことで、マーナさんでのお仕事にも活きていることはありますか?

菅野:私が特に実感しているのは、講評の経験により培ったプレゼン力です。これは大学で、かなり鍛えられました!

芸工大のプロダクトデザイン学科は、デザインを考えて終わり……ではなく、必ずプレゼンがあります。それも所要時間が短くて、どんなに長くても、1人3分に納めるのが基本でした。私は、入学したばかりのときは人前で話すのが苦手だったので、「プレゼンは嫌だな……」と思っていました。でも、何回もやっていくうちに慣れてきますし、卒業する頃には苦手意識はなくなりましたね。

実際の現場でも、新製品を発売するタイミングで社員全員の前でプレゼンをする機会があります。またショールームにお客さまをお呼びして、製品の説明をさせていただくこともあるので、苦手なりにプレゼンの経験を積んできて本当に良かったです。

株式会社マーナ プロダクトデザイナー 菅野彩瑛さん 菅野さんの卒業制作
菅野さんの卒業制作 「tonttu / 木片を生かした香りのプロダクトの研究

それにプレゼンの場は自分が発信するだけでなく、相手方、大学だと先生や周りの仲間からフィードバックを受け取る場でもあります。そこで得られたものも多くありました。いろいろな意見をいただくことで、自分にない着眼点を知ることができます。当然、プレゼンもせず自分一人で黙々とデザインするよりも、良いものが作れるようになります。
そういった意味でも、プロダクトデザイン学科でのプレゼンの経験は、今の仕事にもつながっているのを感じますね。

――今後、どんなプロダクトデザイナーになっていきたいですか?

菅野:“柔軟なデザイナー”になりたいです。

私はまだ知識や経験が足りないので「これはこの方法でしかできないんじゃないか」と、答えを決め付けてしまうことがあります。でも、先輩デザイナーに相談すると、みなさんからいろいろな選択肢、いろいろな可能性をアドバイスしていただけて、自分の世界が広がっていくのを実感します。

今後、もっと良い製品を生み出していくには、そういった柔軟さが必要ですよね。そして柔軟なデザイナーになるには、ものづくりの知識を増やしていくことはもちろん、日々の生活で興味を持つ範囲を広げていくことが大事かな、と思っています。なので、いろいろなところにアンテナを張って、柔らかい発想ができるデザイナーを目指していきたいです!

――最後に、芸工大を検討している受験生へメッセージをお願いします

菅野:「大学に入って、本当にデザイナーになれるのかな……」と、不安な気持ちを抱えている人も多いと思います。
でも、大丈夫です! 私自身もかつてはそんなふうに思っていましたが、“できないこと”は“悪いこと”ではありません。続けていければできるようになる、というのを4年間で実感しました。

あとはできないことをコンプレックスに感じるよりも、「じゃあ、自分は何ができるんだろう?」を考えたり、自分が好きなことを伸ばしていったりするのがいいかな、と思います。そうしていくと、やりたいことが見つかっていくはずです。

大学で過ごす4年間は、きっとその助けになってくれるので、興味がある方はまずオープンキャンパスに行って話を聞いてみることをおすすめします。

株式会社マーナ プロダクトデザイナー 菅野彩瑛さん

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芸工大のプロダクトデザイン学科には、企業と学生が連携して製品を開発するプロジェクトも多くあります。菅野さんは在学時、経験値を積むため、そしてご自身のやりたいことを追求するために、さまざまなプロジェクトに参加したそうです。その経験が今回の製品発売に結びついたのかもしれません。私たちの生活に菅野さんが手掛けた製品があふれる未来を考えると、ワクワクします。

(撮影:永峰拓也、取材:城下透子、入試課?須貝)

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