夏芸大
9月1日から「山形ビエンナーレ」が始まりました。16日まで、本学そして蔵王温泉を会場にさまざまな催しがあります。ぜひ足をお運びください。
さて、この山形ビエンナーレに先立って開催されている「夏芸大」では、本コラムも「かんがえるジュークボックス講義編」を開講し、英語とロック、“West Meets East”をテーマにお話をさせていただきました。平日にも関わらず貴重な時間を割いて受講してくださったみなさま、本当にありがとうございました。3時間も熱心に耳を傾けてくださって本当に嬉しかったです。
都合がつかずに参加できなかったという声もあったり、なかったり…とにかく、どんな講義だったのか、今号では本コラムの臨時増刊号としてお届けいたします。受講された方には復習の時間、そして、提出課題の公開の場となります。
講義と演習!
本学の実際の英語の授業ではどんなことがおこなわれているのか、その一部を垣間見ていただくことと、英語とロックとアートについてかんがえる時間をともに過ごすことが今回の「かんがえるジュークボックス講義編」の趣旨。
ザ?ビートルズの曲をアナログレコードで聴き、歌詞の書き取り、そして文法の復習から詩の解釈まで、あれやこれや詰め込んだ3時間でした。そうそう、キーワードはエマソンの“Genius”、ソローの“Simplify”、レノンの“Aisumasen”でしたね。ここ、テストに出ます。
そして、西洋と東洋とは本当に出会い、理解し合えるのか、エドワード?サイードの『オリエンタリズム(Orientalism)』やジョンとヨーコの「バギズム(Bagism)」の話を交えて考察したりもしました。
講義編の後の演習編では、英語俳句の詠み方を身につけました。wabi, sabi, shibumiの精神を体得したジョン?レノンの1970年の曲“Love”を参考にしましたね。
Love is real, real is love
愛は真実、真実は愛
Love is feeling, feeling love
愛は感じること、愛を感じること
Love is wanting to be loved
愛とは、愛されたいと望むこと
Love is touch, touch is love
愛は触れること、触れることは愛
Love is reaching, reaching love
愛は届くこと、愛に届くこと
Love is asking to be loved
愛とは、愛されたいと願うこと
Love is you, you and me
愛はあなた、あなたとわたし
Love is knowing we can be
愛とは、わたしたちがこの場に二人いられると知ること
Love is free, free is love
愛は自由、自由は愛
Love is living, living love
愛は生きること、愛を生きること
Love is needing to be loved
愛とは愛されたいと求めること
俳句に通じる簡素で芯のある詩です。そう、”free is love”という一節で連想されるのはガートルード?スタイン(Gertrude Stein)さん。あえての文法破壊をかんがえるべく、スタインさんの薔薇の詩(“Sacred Emily”)も一緒に読みました。
ジョン?レノンが読んでいたというR.H.ブライス(Blyth)の俳句の本、さらに、音節やリズム、haikuで求められる簡素化についてもかんがえて、haikuを一句詠みました。最後には、詠んでいただいたhaikuをタイプライターで打って提出していただくというアトラクション。なぜタイプライター?いい質問です。タイプライターは創作意欲をかき立てる魔法の道具だからです!
というわけで、このたびの夏芸大の受講生のみなさまが提出してくださった課題の英語俳句をここに掲載させていただきます。お題は「夏」「芸」「大」のどれかとなっています。
Natsugeidai
Sitting in the classroom
English word dancing in my head Tsukiusagi
watching fireworks
light up night city
and your profile tokumei
bedroom light down
hot air still stays
summer night minoru
downpour
roof sound
breakdown crying k550spyder
summer has passed
Life has passed
almost nightfall boar-song
One hot day
Young acorn above
End of summer 山の麓の絵描き
Unique Class
Feel like a student
A day in summer Kyoko
In summer day
So sleepy
Monday morning watashi_
I feel Autumn has come
At the section
of Vegetable Saki Higuchi
The summer festival has come again
High in the sky
Sings of autumn. Koji Watarai
Cutting the big watermelon into pieces
Big red smelling -
the family smiling my cat as well mizue
hometown river -
thousands of sparkles of fireworks
adieu, summer holidays hana
夏芸大の講義のあの1日を思い出させる、夏の空気の粒子がどのhaikuにも含まれている感じがします。人生のなかの大切なモノをしっかり見つめ、それを英語で表現することで創造的な思考を得る、そんな演習になったと思います。課題の提出、ご参加ありがとうございました。
というわけで、今回は講義形式の文体でお送りしました。
そうそう、講義の最後には、参加記念に「かんがえるジュークボックス」ステッカー、そして、全員に異なる詩の引用がタイプされたポストカードを差し上げました。嗚呼、ステッカーが欲しかった!という方は9月21?22日に開催の芸工祭にお越しください!売るほどございます!
それではまた。次の1曲までごきげんよう。
Love and Mercy
(文?写真:亀山博之)
BACK NUMBER:
第1回 わたしたちは輝き続ける~ジョンとヨーコの巻
第2回 バス停と最新恋愛事情~ザ?ホリーズの巻
第3回 孤独と神と五月病~ギルバート?オサリバンの巻
第4回 イノセンスを取り戻せ!~ザ?バーズの巻
第5回 スィート?マリィは不滅の友~フレイミン?グルーヴィーズの巻
第6回 ツンデレな愛をかんがえる~ザ?ビートルズの巻
第7回(芸工祭直前edition) ゲットしに来て!~バッドフィンガーの巻
第8回(芸工祭報告edition) 浦島と美女をめぐる仮定法~ブレッドの巻
第9回 夢見る人~ニッキー?ホプキンスの巻
第10回 脱構築 DE ビートルズ~ザ?ビートルズ?その2の巻
第11回 年末年始はファンキーに!~イーグルスの巻
第12回 自転車でいこう~クイーンの巻
第13回 卒業の先に~サイモン&ガーファンクルの巻
第14回 船出のとき~ロッド?スチュワートの巻
第15回 恋の縦横無尽~クリストファー?クロスの巻
第16回 田舎へ行こう~キャンド?ヒートの巻
第17回 ハンバーグ?ランチはいかが?~プロコル?ハルムの巻
第18回 宇宙からのメッセージ~デヴィッド?ボウイの巻
第19回 体の知れない電波を操れ!~レッド?ツェッペリンの巻
亀山博之(かめやま?ひろゆき)
1979年山形県生まれ。東北大学国際文化研究科博士課程後期単位取得満期退学。修士(国際文化)。専門は英語教育、19世紀アメリカ文学およびアメリカ文学思想史。
著書に『Companion to English Communication』(2021年)ほか、論文に「エマソンとヒッピーとの共振点―反権威主義と信仰」『ヒッピー世代の先覚者たち』(中山悟視編、2019年)、「『自然』と『人間』へのエマソンの対位法的視点についての考察」(2023年)など。日本ソロー学会第1回新人賞受賞(2021年)。
趣味はピアノ、ジョギング、レコード収集。尊敬する人はJ.S.バッハ。
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