[最優秀賞]
加賀日奈子|ゆめうつつ
青森県出身
吉賀伸ゼミ
2400×5400×3200mm 石膏 スタイロフォーム アクリル絵具 マスキングテープ 砂利
この作品は「憂鬱」をテーマにしている。
憂鬱さは一般的にネガティブな印象だ。心が重くなり、体を動かすことも億劫になる。
しかし、私はその感覚が夢に似ているように思え、一種の美しさも感じる。
作品のモチーフには、私の身近なものたちを使い、「憂鬱」のイメージを落とし込んだ。
「不安」や「無力感」とも違う、夢の中を揺蕩うかのような静かさ。
あの感覚を形にすることで、「憂鬱」な感覚や、その中の美しさを感じてほしい。
吉賀伸 教授 評
モノクロームの、言葉の届かない世界。ゆっくりと漂う、生き物とも器物とも判別のつかないモノたち。影のような、地面に溶け出しているような、朦朧とした気だるさ。フランツ?カフカの小説に登場する「グレゴール?ザムザ」や「オドラデク」のような不条理な存在なのだろうか。この妖しいインスタレーション作品は、憂鬱の一瞬を切り取った心象風景として広がっている。近づいて手で触りたくもなり、離れて絵画的に眺めたくもなる。観る者を現実と非現実の狭間に立たせ、果てしない思索の空間に誘う。
作者の加賀さんは、これまでも、夢や無意識、事物の関係性といった形のない不確かなものを探ってきた。物質感や存在感の強い彫刻の分野において、形而上的な主題を扱って成功させることは容易ではないが、卒業制作では物体と空間が心地よく混ざり合い、鑑賞者の内省を促す体験的な優れた作品として結実させることができた。そしてちょうど今の時期、東北の長い冬の、雪に覆われた静かな景色とも呼応している。この作品は、青森で生まれ育った加賀さんの深淵にある原風景なのかもしれない。今後の展開にも大いに期待したい。