[優秀賞]
橋本和佳奈|もしかして?あたたかくて?つめたくて
福島県出身
木原正徳ゼミ
木原正徳 教授?副学長 評
ナビ派※1を思わせる特異な色彩感覚と絶妙な配色で、日常の何気ない一コマを自在に切り取り描き出す。大小合わせて9点の作品群は、現在と過去を軽やかに飛び越えながらリズムを刻む。絵の具の塗りやストロークは極めて伸びやかで屈託がない。
しかし南相馬で育った君のこれらの作品の根底には、震災の辛い体験が静かに横たわっているという。
2年次最後の進級制作展で君は最優秀賞を取った。確かなデッサン力を武器に着実に絵画の地力を付け、学部の前半は真面目で優等生的な制作内容だった。その後ドローイングを繰り返しながら自身を紐解き、様々な展覧会を見て感度を研ぎ澄ませ、徐々に作品は自由度を獲得していく。
そしていよいよ迎えた卒業制作。ところが12月初めになっても気持ちばかりが先行し、いくら描いても画面は硬直するばかり。君の良さを全く引き出すことができなかった。
「もはやここまでか」 それまで横構図で描いていた大作を縦構図に、別の大作一点も描き直し。土壇場でやっと息を吹き返し、画面は生気を取り戻し、そして最後まで一気に駆け抜けた。
漫画家としての職業的自立、そして伸びやかな絵画制作。笑顔で話す君の未来を僕は楽しみにしています。
※1 ナビ派…19世紀末のパリで伝統に反発し、新たな美を目指した作家達