文化財保存修復学科Department of Conservation for Cultural Property

齋藤有里|写真プリントの劣化と適した保管方法の検討
新潟県出身
村上智見ゼミ

 現代ではスマートフォンが普及し気軽に写真を撮れるようになったこともあり、写真を紙媒体にプリントする機会が少なくなっている。しかし、それ以前の時代に撮影された写真は紙媒体にプリントし、各家庭でアルバムなどに入れて保管されている。四季がはっきりしている日本では、温湿度の変化によってアルバムに保管している写真が劣化する懸念がある。よって本研究では現代のプリント技術による写真を対象に、家庭での写真保管を想定し、様々な温湿度環境で写真プリントの変化を観察する実験を行い、家庭での適した保管方法を検討した。
 実験は、①高温環境下、高湿環境下、②高温環境下から低温環境下、高湿環境下から乾燥環境下、③高温環境下、高湿環境下から紫外線、④紫外線といった環境に一定期間置く4種類の劣化観察実験を行った。使用した写真は現代のプリント技術によるものとして、銀塩プリント、インクジェットプリント、レーザープリントの3種類を用意し、それぞれラミネートフィルムのアルバム台紙とポケットアルバムの2種類のアルバムに入れた。
 実験の結果、どの実験でも色彩変化したものは赤白く色褪せるといった劣化が見られた。プリント方式で比較した場合、特に顕著に感じたのはインクジェットプリントで、特に劣化が著しかった環境は高湿度環境であった。保管においてどちらのアルバムが適しているのかを考えると、どちらのアルバムも一長一短であり一概にどちらが優れているとは言い切れないという結果だった。
 実験の結果から、家庭でのアルバムに入れた写真の適した保管方法として、場所は湿潤でなく温度変化の著しくない暗所が望ましいと考えられた。アルバムとしては、ラミネートフィルムのアルバム台紙は物理的な劣化原因を防ぐことができ、ポケットアルバムは入れ替えがしやすくラミネートより比較的通気性があると考えられるため、アルバムは保管場所や方法を考えて選ぶと良いだろう。望ましい保管という観点で考えるならば冷暗所での保管であり、家庭における冷暗所としては押入れ等の収納スペースが挙げられるが、高湿度になりやすい場所である。恒常的に収納スペースで保管する場合は除湿剤を設置し、定期的に換気を行う等湿度調整が重要になる。また、出来るだけ高湿になりやすい部屋の角や床などを避けて保管するのが望ましい。保存性の高さの観点では、簡単に画像情報の消えない銀塩プリントが望ましいと考える。