茂木槙二|山形県内の輪蔵と傅大士像及二童子像の包括的調査
秋田県出身
宮本晶朗ゼミ
本研究は、山形県内の輪蔵と傅大士像および二童子像の調査を通じ、これらの文化財の保存状態を記録することを目的として、その構造、装飾、及び地域的な特徴を明らかにした。輪蔵は、鎌倉時代に禅宗と共に伝来した仏典を収納する回転式書架建築であり、江戸時代の黄檗版一切経の普及により東北地方にも設立された。傅大士は中国南北朝時代の在家僧侶である。宋代に輪蔵を創建した人物という伝説が形成され、輪蔵正面に傅大士とその息子、普建と普成の三尊像を安置する形式が普及した。傅大士図像は、『仏像図彙』(図1)や『北斎漫画』(図2)、『和漢三才図会』(図3)がある。調査対象として、先行研究を基に山形市立石寺、酒田市の大信寺、海晏寺の輪蔵、及び傅大士像がある寺院を選定し、目視や写真撮影により外観の詳細な記録を行った。
調査結果から、輪蔵の構造は寺院ごとに異なり、立石寺は心柱開放式(独楽型)、大信寺と海晏寺は心柱を須弥壇で覆う形式を採用していることが確認された。また、傅大士像の表現にも差異があり、手の指の向きや位置に特徴が見られた。二童子像の表現においても、左童子は傅大士を指さす姿勢が一般的であることが判明した。
本研究は、山形県内における輪蔵と傅大士像の未解明部分を補完し、調査を踏まえ尊容と成立要因を考察した。今後は、さらに詳細な調査を進め、全国的な事例との比較を通じて、傅大士像および輪蔵の文化財としての意義を再評価する必要がある。
(出典)
図1:土佐秀信 画『仏像図彙』二,武田伝右衛門,明治33. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3442142 (2024-11-02閲覧)
図2:葛飾北斎/筆『北斎漫画』五編,東京国立博物館デジタルライブラリー https://webarchives.tnm.jp/dlib/detail/5217 (2024-11-02閲覧)
図3:寺島良安尚順 編『和漢三才図会 : 105巻首1巻尾1巻』[63],[江戸時代]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2596410 (2024-11-02閲覧)
1. 土佐秀信『仏像図彙』2巻2頁より
2. 葛飾北斎『北斎漫画』5編12頁より
3. 寺島良安『和漢三才図会』105巻より