美術科 日本画コースDepartment of Fine Arts Japanese Painting

[最優秀賞]
永井遥|世界に揺らいだ
東京都出身
長沢明ゼミ
2883×1833 和紙、岩絵具、水干絵具、胡粉、墨、アクリル絵具、水彩、色鉛筆

木は移ろう。光に照らされ常に表情を変えながら 、環境に適応するために形を変えていく。
人の心も移ろう。心は常に揺れ動き、自我を少しずつ変えていく。
私は木を描くことで変化する自我の今を捉えようとした。


長沢明 教授 評
作者の言葉から、方丈記の冒頭のように1分1秒の絶え間なく流れる移ろいと自身の心の変化を重ね合わせて、絶妙な表現だなと理解できます。そしてそれは、目視では気付かないほど緩やかな変化であることも。しかし、作品を前にすると何よりも最初に、眩い光が心地よく沁みてきます。物理的な現象として陰影で現れる光ではなく、形と色彩による試行錯誤から滲み出た光です。
永井さんは、本画制作と並行して何度も何度もドローイングでイメージを追いかけ、その度に言葉で整理しながら取り組んでいました。そこから紡ぎ出された光には形の残像がまぜこぜとなって、絶妙な緩い時間を暗示させてくれたのだと納得させられます。
手を動かしながら描くことと同時に、言葉が表現を牽引し、創作と思考の両輪をフルに回せたからこそ生まれた秀逸な作品です。