須田幸生|地底の森ミュージアムにおける紫外線を用いたカビ除去方法についての研究
静岡県出身
佐々木淑美ゼミ
遺構の露出展示は、遺跡を構成する要素そのものを公開するという点において、遺跡の存在と臨場感、及び内容や価値を伝えるために効果的な公開手法の一つである。しかし、遺構の露出展示には生物被害など様々な課題が存在する。
宮城県仙台市太白区にある地底の森ミュージアムの地下展示室(図1)では、旧石器時代の森や焚火跡などが残る遺構を露出展示している。この遺構では、塩類の析出や藻類、カビといった生物被害が散見される。?
先行研究ではスチーム洗浄機による湿熱での殺菌を検討している。しかし、スチームによって土中水分を上昇させることは、更なる生物被害に繋がる可能性がある。?
地底の森ミュージアムの地下展示室から採取したカビを培養し、培養したシャーレに対して紫外線照射実験を行った。?
その結果、紫外線照射によって、緑色胞子を産生する種類の菌では胞子の産生能力の低下(図2)、白色胞子を産生する種類の菌では生育面積の減少(図3)を確認した。また、紫外線照射による影響は生育初期の段階の方が大きく、紫外線照射量が多いほど効果が大きいことを確認した。
紫外線照射によって殺菌効果を得ることができるのは、照射対象物の表面のみであり、遺構内部に対して効果はないと言える。しかし、遺構表面の外観を損なわないという意味であれば、紫外線を照射することによってカビが緑色にならない、繁殖面積が減少する、成長を抑制できるといった効果は十分に意味があると考える。スチームによる処理は、生物被害の発生が確認されていない地点では無意味に水分を与えるだけになってしまう可能性がある。しかし、紫外線照射を行うことは、遺構に対して追加で水分を与えることもなく、生物被害の発生前から使用することで予防保存の効果が期待できると考える。?