様々な照明による劣化に関する基礎的研究
上原明日香
宮城県出身
保存科学ゼミ
紫外線や赤外線をあまり含まない LED や有機 EL パネルは、省エネの観点からも優れており、多くの美術館?博物館で切り替えが進んでいる。展示照明に関する先行研究の多くは、影響を受けやすい有機素材、特に染織品を対象としており、紫外線によって顕著に退色が進むことが知られている。本研究では、山形県の特産物である紅花で染織した8種類の布を用いて紫外線、EL パネルによる劣化実験を行い、紅花染織品に適した照明について検討を行った。
実験の結果、照明の種類にかかわらず、天然繊維である綿や麻に比べて、合繊繊維や化学繊維のレーヨン、ポリエステルは退色が著しく進むことがわかった。レーヨンやポリエステルは、最初の1週間で退色し、1か月後には完全に色が失われた。布の中では綿が最も退色せず、1か月経過しても色がはっきりと残っていた。紫外線と有機 EL パネルではおおよそ類似した結果となったが、LED では、他の照明に比べ麻の退色が進んだ。
追加実験として、有機ELパネルの照度を半分にして実験をしたところ、退色の進行が遅くなり、1か月経過しても薄く色が残っていた。