[優秀賞]
広瀬眞子|流るる紺碧
岐阜県出身
長沢明ゼミ
2218×4546×30㎜ 高知麻紙、岩絵具、水干絵具、胡粉、彩墨、ピグメント
「生命の循環」をテーマにうねる海の世界を描きました。生き物は生命を取り込み、死骸は微生物によって分解され、粒子となって海へ還っていきます。私たちも同様に循環する自然の一部であり、私は海や鯨のように力強く大きな存在の一部になりたいと想うようになりました。そして、私に生きるエネルギーを与えてくれるものの呼吸や、鼓動、生み出される流動をイメージしながら、水の動きや滲みを用いて表現しました。
長沢明 教授 評
作者の制作現場をのぞきに行くと、画面いっぱいに水たまりができるほど、いつもビシャビシャになっていた。絵具を泳がせながら何層にも塗り重ねては溶かし滲ませ、自然現象の力も借りつつ念じるかのように制作をしていた。
一見すると何が描かれているのかはっきりとは分からないが、しばらく眺めていると、
巨大な鯨のような生き物のシルエットに気づかされる。その瞬間に画面はダイナミックな水のうねりとなり、鑑賞者に迫ってくるのではないだろうか。
作者は生き物と水流の渾然一体となった表現を目指した。うねりによって生じる生命の波紋を表すために、呼吸や鼓動を意識しながら、ビシャビシャにしなければいけなかったのだ。そして作者自身もそこに溶け込みたいという想いを混ぜ込んで、水を伝って生命の神秘に触れようと没入した、これこそが表現の源であった。
「生命とは?」という途方もない問いに、水を媒体として答えた渾身の一枚だ。