大学院Graduate School

[優秀賞]

早坂美里(芸術文化専攻 工芸)|横たわる女
山形県出身
深井聡一郎ゼミ

陶に霊性を与えることは可能なのかを試みる為に、仏像の様式を用いて女性像を制作しました。美術史家?井上正が語る「霊木化現仏」の思想を基に、「霊木」を粘土の塊に置き換えて、カービングのみで女性像を彫り出しています。木枠に600kg以上の粘土を踏み固め、無垢の塊を作ってから女性像を彫り出し焼成することで、土や女性が元来備えている霊性をより可視化させる狙いがあります。



三瀬 夏之介 研究科長 評
本研究は木彫仏の様式を用いて女性像を制作することで、陶に霊性を与えることはできるのかを追求するものです。まずは明治以降に生まれた「美術」、「工芸」、「彫刻」の歴史的な枠組みを整理し、工芸分野に在籍しながらも彫刻の技法を用いて人体の制作を行う自身の立ち位置を丁寧に確認できている。その上で「女性であることから生まれる自己嫌悪」や「女らしさへの抵抗」といった彼女のパーソナルな悩みから、近代的社会を支える家父制度や性別二元性といった現代的なテーマにまで展開させることに成功している。定義された霊性と現代の女性性の関係がまた結びつかないところはあるが、力技で制作された等身大の陶作品は現代の女性像の表出として高いレベルで成功しているので優秀賞とする。