映像学科Department of Film and Media

[優秀賞]

佐々木春杜|masked 2020
宮城県出身
屋代敏博ゼミ
写真

被写体となった240枚のマスクは全て、実際に道端に捨てられていたマスクです。
この状況が一刻も早く「過去」になるよう、願いを込めて。



屋代 敏博 准教授 評
佐々木春杜の「Masked 2020」は時代を抽出して、的確に掴み取ろうとする意欲的な作品だ。佐々木は「道端に捨てられたマスク」に着目し、地元である仙台市をフィールドにして撮影を行った。撮影したマスクの写真は合計700枚、卒展会場には原寸大のマスクのモノクロ写真が240枚グリット状に整然と並べられて展示されている。優れた写真家は冷静に時代を分析し、自らの皮膚感覚でその時代に反応し、写真作品として現出させる。
佐々木の卒業制作で展示したマスクの写真はモノクロプリントの美しさだけでなく、「歴史を検証するための貴重な遺物」という記録性と、それらのマスクを誰かが使用した「抜け殻のポートレート」という記憶性が内在している。佐々木の写真は2020年の仙台市の道端の一部の空間と、その一瞬の時間を切り取ったものだが、2020年が歴史の転換期とすると、佐々木の仕事は未来の人たちの目前に大きな価値を持って立ち現れると確信できる。